こんにちは。今回は営業について考えていきます。
最近「営業はなくなる」とか「営業不要論」を良くネットで見かけます。元営業の私としては聞き捨てならぬトピックです。
- 営業が不要だという根拠はいったい何なのか
- 営業は本当に不要なのか
- じゃーどうしたらいいのか~今後も生き残っていく営業とは
この3点を軸にして、ネット上で交わされる営業の将来性について検証してみたいと思います。
今回の記事はこんな人のお役に立ちます。
- 営業として頑張っている全ての人
- 営業の将来に不安を感じている人
- 営業は不要だという議論の本質を知りたい人
- 営業として今後身に付けるべき能力を知りたい人
- 足で稼いでいる営業マン
こんな人には興味深い記事になっています。
リモートワークに悩む営業
先日、元営業マンで現在はマーケティング担当をされている方と打ち合わせをしているときのことです。コロナ禍にある今、営業についてその人が言った言葉が印象的でした。
「リモートが広がり今の営業は大変だと思う」。
理由はこういうものです。
- 訪問規制でクライアント先へ訪問できない
- 「近くまで来ましたので寄りました」作戦ができない
- プレゼンがやり難くなった。
- 「顔をつくる」ことができなくなった
- 名刺も置いていけない
実はこういった傾向はコロナ禍前から見られ、アポイントの際にはこんな風に言われていたようです。
- わざわざ来てもらわなくても良いです。
- そんなものは送って下さい。
- 要件はメールで入れて下さい
- 別に要りません。
- (担当は)どなたでも構いません
どの対応も営業にとっては辛いです。営業を長くやってた私には良く分かります。
以前からこんな状況があって、コロナ禍でリモートワークが広がりその傾向が益々強くなっている。営業にとって「やり難い」状況は広がる一方のようなのです。
先ほどの元営業マンは、昨今のこういった状況を受けて「今の営業は大変だと思う」と言われたわけです。
しかし残念ながらそういった状況は今後加速していくことでしょう。
理由は後ほど説明するとして、以下に示すような従来型の営業が得意としていた部分はそのやり方が大きく変わろうとしているのは確かなようです。
- 商談
- 情報収集、情報提供
- 信頼関係の構築
- プレゼンテーション(提案)
- アフターフォロー
こういった部分の「やり方」が今後明らかに変わっていくものと思われます。
それはいったいなぜなのか?。そしてどう変わろうとしているのか?。なぜこのような状況が生まれているのか?。
次項で詳しく見ていきたいと思います。
営業が不要だと言われる理由
非効率な営業の業務プロセス
私も元営業だったんで良く分かるんですが、営業の業務プロセスというか仕事のフローは本当に非効率です。
これは特に日本の営業スタイルといって良いものだと思います。たぶん海外の営業と比べるとかなり「特殊」だと思います。日本の営業の業務プロセスを下に示します。
- 見込み客リストアップ
- アポイント or 飛び込み営業
- 訪問
- ヒアリング
- 提案(コンサルティング)
- 商談
- 成約
- 契約(クロージング)
- 納品(サービスの提供)
- アフターフォロー(定期訪問、クレーム処理)
どうですこれ?。顧客を開拓する一時期なら分からないでもないですが、開拓した顧客はず~っと顧客として管理していくわけです。しかも複数社を1人で・・・。
飛び込み営業なんて非効率の極み!。私が駆け出しの頃は良く「飛び込み営業ができてこそ本物の営業だ」なんて言われてました。もしかしたら今でも!?。
海外、特にアメリカなんかは国土が広大でこんな営業スタイルを1人でやってたら大変効率が悪い。よってその業務プロセスはしっかり分業化されているのです。
しかし日本の営業は違います。ハッキリ言えば「何でも屋」なんです。最初から最後まで、そしてその後もずっと。これが日本の営業の現実です。
そんな日本の営業スタイルのベースには「顧客の元に足繁く通う」という思想が常にあります。これは企業規模にはあまり関係ないはずです。
ある意味日本の営業はプロジェクトの入り口から出口までを統括する「プロデューサー」といっても良い存在なわけです。
良い面もあるのでしょうが「属人化(この人じゃないとNG)」等、問題が多いのも事実でなのです(接待が入っていないという声も聞こえてきそうです)。
そんな従来型の営業を変えていく流れが出てきています。理由は
- 効率が悪い
- 属人的である
- 人手不足
- AI・IoT・クラウドの発達
- アメリカをはじめ世界的な傾向
こういったところが考えられます。
営業現場で起きていること
日本の営業が変わろうとしています。
「属人化」なんて言いましたが、従来型の営業って、顧客の元に足繁く通い、「顔」で営業したり、契約に向けてのスキルやノウハウが共有化されず1人のスーパー営業なんて人達が存在してたわけです。
ここを見るだけで日本の営業スタイルの特殊性がうかがえます。そんな日本の営業がいよいよ変わろうとしているんです。
いったい何が起きているのか?。まさにそれこそが冒頭の元営業マンが言った「今の営業は大変だ」の本当の意味になってくるのです。
営業の現場で起きていること。それは営業の「インサイドセールス化」が進んできているということです。
インサイドセールスって聞かれたことありますか?。
言葉の響きで何となく感じ取れるものもあるんじゃないかと思うんですが、インサイドセールスとはこんなことを言うんです。
インサイドセールス
電話や電子メール、Web会議ツールを使い、見込み客や顧客に対し遠隔(非対面)でコミュニケーション(営業活動)を取り、見込み客の精査から商談創出を行い、商材によっては契約までも行ってしまう内勤型営業のこと。その過程でAIやクラウドといったテクノロジーを活用する。
細かく説明します。
前項で営業の業務プロセスを確認しましたが非常に多岐にわたります。その営業の業務プロセスを部分的あるいは全面的に内勤で行おうとするのがインサイドセールスです。
インサイドセールスに対して外勤営業をフィールドセールスと言います。
部分的に導入する場合はインサイトセールス+フィールドセールス。全面的はもちろん全ての業務プロセスをインサイドセールスに移行してしまおうというものです。
当然インサイドセールスが向いている商材そうでない商材はあるでしょう。
いずれにしてもインサイドセールスを導入することで無駄をなくし、営業プロセスを効率化して経験に頼らない営業環境を構築しようとする考え方なのです。
インサイドセールスはその過程でMA・SFA・CRM等、セールステックと言われるテクノロジーを活用します。こうすることで経験によらない営業活動が可能になってくるのです。
横文字と略語がいっぱい出てきましたので、ここでまとめておきます。
- セールステック(Sales Tech)
- MA(Marketing Automation)
- SFA(Sales Force Automation)
- CRM(Customer Relationship Management)
それぞれについては以下にまとめています。
まずは「セールステック」からです。
次は「MA」です。
次に「SFA」についてです。
最後は「CRM」です。
いかがですか?。営業にもテクノロジーの波が確実に押し寄せてきています。
いやー頭が痛くなりそう・・・私も「昭和」の人間です。
インサイドセールスはこういったセールステックを適時活用し、オフィスに居ながらにして新規開拓から契約成立までを行ってしまおうというものなのです。
目指すところは、効率的かつ正確に。経験や勘といった属人性を排除する。そこには新人であるが故の経験不足はネガティブな要因ですらないのです。
世の中の流れ、クライアント先がこんなことになってたら、そりゃー「今の営業は大変だ」って言いたくもなりますよね。「来なくていい」とも言われる。
こういったセールステックは、SaaSと呼ばれる業務用ソフトウェアのクラウドサービスとして企業に提供されています。
また横文字が出てきました。
セールステックはインサイドだけで享受できるサービスではなく「いつでも・どこでも」端末さえあれば活用できるわけです。
よって端末とWeb環境とセキュリティーさえしっかりしていれば在宅勤務でもインサイドセールスはできてしまうのです。
おそらくこの流れは今後加速し多くの営業はこの波から逃れることはできないでしょう。
こういった流れの中で出てきたのが「営業不要論」です!。
営業不要論
コロナ禍で「脱・3蜜」「非接触」の流れが広がっています。
それに伴い働き方が多様化し、オフィスも「1拠点集中から多拠点分散」に変わっていくことでしょう。在宅勤務やテレワーク環境も大きく進化しています。
環境の広がりはインサイドセールスを加速させますし、そうなるべきだと私は思います。そうでないと日本は世界と伍していけない。
こういった変化の中で出てきているのが「営業不要論」です。
インサイドセールス化しMA・SFA・CRMといったセールステックを活用していくことは、営業のスキルやノウハウの共有化に他なりません。
要は営業プロセスは「誰にでもできるように定型化」されていくはずです。BtoCだろうとBtoBだろうと、インサイドセールス化が進んでいくことでしょう。
そうすると経験を積んだ営業は必要なくなる!。必要どころか邪魔になる!。そんな日が近づいている気配すらあるテクノロジーの発達ぶりです。
でも!・・・それでも営業はなくならないでしょう。私は断言します。テクノロジーの発達で営業のスタイルは変わっても営業はなくならない。そう思っています。
では今後「営業」はどうなっていくのか?。根拠と合わせて事項で見ていきます。
新しい時代の営業とは
これからの営業の形
インサイドセールスという新しい営業のスタイルを見てきました。ではこれから先の営業がどうなっていくのか見ていきたいと思います。
インサイドセールスは全面的か部分的な形で営業を代替すると言いましたが、扱う商材次第で全ての営業プロセスがインサイドセールスになってしまうはずです。
そして営業職は確実に減っていく・・・流れが止まらないのは事実です。
ただし重要なことがあります。
それは、クライアントの悩みや要望をじっくりと聴き出し、最適なソリューションを提供するという「ある意味営業として一番大切な業務」は決してテクノロジーには代替できないということです。
その道のプロとしてクライアントすら気づいていない問題点に気づき、ソリューションを提供する「コンサルティング営業」「ソリューション営業」は新しい時代の営業スタイルになっていくと私は思っています。
そしてそこに関して日本の営業は強い!。だって「足繁く通う」というメンタリティを持っているからです。これって言い換えれば「顧客に寄り添う」ってことです。
「顧客に寄り添う」を最適化するためにはテクノロジーを活用することが必須です。無駄を省き効率化することで「顧客に寄り添い過ぎない」ことも重要です。
顧客の邪魔にならずにいつも近くに居る。そして必要な時に最適なモノやサービスをスピード感を持って提供する。これが新しい時代の「寄り添う」イメージでしょうか?。
(でもこのイメージって、従来型の営業とそう変わらない気もします。)
「顧客優先主義」はグローバル社会でも力を発揮するはずです。
結論!。これからは「顧客に寄り添う営業」が求められるのです。足繁く通うのではなく、「テクノロジーを駆使して顧客に寄り添う営業」が必要とされているのです。
これが私が考える新しい営業の形です。
「ウチには関係ない」なんて言ってる中小企業の営業の方々・・・中小企業だからこそ必要なんです。
「業界的に関係ない」と言っている営業の方々・・・本当にそうですか?。今の業務プロセスを振り返ってみませんか?。無駄な動きが多くないですか?。
「横文字が多くて、ハイテクは良く分からん」と仰ってるベテラン営業の方々・・・ベテランだからこそ生きる道も残されているのです。
違いはあれど、業界や業種を超えて営業の「移動時間」は絶対に無駄なはずです!。
インサイドセールス化する余地が必ずどこかにあります。他にも必ずあるはずです。自社の営業の形を見直してみましょう。
それは営業という職種だけでなく、企業自体がサバイバルしていく上で非常に重要になっていく視点でもあるのです。
新時代の営業に求められる能力
新しい時代の営業に求められる能力を考えます。
- セールステックを使いこなす能力
- 傾聴力(ヒアリング能力)
- 論理的に考えぬく能力
- コミュニケーション能力(話術)
- コンサルティング能力
- プレゼンテーション能力
- SNSを駆使する能力
- マーケティングの知識
- チームを統括する能力
こういう能力がすべてにおいて「高いレベル」で求められると考えて下さい。ここにあげているのは従来型の営業に必要だったことも多いですよね。
でもそこにセールステックがあることで、対顧客で提供される全てのソリューションの「質」「正確性」「スピード」が桁外れに違っているのです。
新しい時代の営業は、セールステックが当たり前の環境で仕事をするという認識が必要になります。そこではこんな能力が求められるのです。
私は「営業はなくならない」と言いました。間違っていないと思います。
でもインサイドセールス化が進む中でセールステックが浸透し、その変化に対応できない営業は間違いなく淘汰され消えてしまうでしょう。
これから日本でも営業プロセスの分業化が予想されます。というか、もう進んでいるはずです。
そうなったときインサイドセールスのどのパートを自分は担えるのか?。これまでの自分の営業スタイルを見直すところから変化への適応は始まっていきます。
私のブログの定番ですが、自分を振り返り「強み弱み」を知ることから「変化」に対応する術を身に付けていかなければならないのです。
営業は不滅です
私は営業は不滅だと思っています。しかし従来の営業が素晴らしかったかというと、そんなことはありません。見てきたように無駄が多く非効率だったのも事実です。
しかし最近の「営業不要論」を唱えている方々の議論を見ると、その多くが「営業をされたことがないのではないか?」と思ってしまうのも事実です。
なぜか?。
それは、どれだけテクノロジーが発達しようとも最終的に意思決定するのは人間だからです。テクノロジーは意思決定の支援をするだけなのです。
よって最終的には「人間 対 人間」。そこに必要なのは「関係性」なのです。
こういうと「また精神論か!」なんて言う人もいるでしょう。しかし22年に渡り営業を続けてきた私が思うのは「関係性」を無視した議論は机上の空論ということです。
この関係性を築けるのはテクノロジーでもなくエンジニアでもなく「営業」に他ならないのです。
もちろんこれから営業は減っていくでしょう。変化にも晒されるでしょう。しかし変化を受け入れ「関係性」を構築できる営業は必ず生き残ります。
「関係性」の構築方法も変化します。これまで示した通りセールステックへの親和性は欠かせません。関係構築のため大いに活用しましょう。
そしてそこにこそ、これまで営業として培ってきた「本質的な関係構築力」が必要なのは言うまでもありません。
現在営業として頑張っているあなた「まだまだ生き残れます」。これから営業を目指させるあなた「営業はなくなりません」。
営業は不滅です。
まとめ
あのテスラ・モーターズが時価総額でトヨタを抜きました。
敬愛するイーロン・マスクCEOは2019年3月「自動車のオンライン販売への全面移行」を発表しました。リアル店舗は段階的に閉鎖とのニュースでした。
「営業不要」という流れが確実に近づいていることが分かるニュースです。再三言いますがこの流れは加速していくことでしょう。
今回の記事で書いた通り「営業はなくなりません」。
しかし環境が激変しているのは確かで「変化に適応できる営業はなくならない」といった方が適切かもしれません。
営業に限らずこれからは多くの職種がAIやIoT、RPA等に取って代わられる可能性があります。
私たちは常に将来を見据えそして何よりも自分自身を見据えながら、大きな変化に対応しサバイバルしていかなければなりません。
その変化に対応していくため、少しでもお役に立つ記事をこれからも書いていきたいと思っています。
最後まで目を通してもらいありがとうございます。
また次回お会いできることを楽しみにしています。
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