高校生の新卒採用を成功させる注意点【信頼関係の構築が鍵です】

採用

こんにちは。

今回は高卒の新卒採用についてお話しします。

人材不足の中にあって高校生に熱い視線が集まっています。大卒採用がうまくいかない中小企業はもとより、大企業も高校生の採用に積極的になっています。

私は高校生と接する機会も多く、高校生の採用について多くの企業と情報交換を重ねています。

そんな現場の状況を踏まえて、高校生を新卒採用していくために必要な考え方をお伝えしていきます。

今回は現場からの生の情報です。

今回の記事で分かること。

  • 高校生の可能性
  • 高卒採用で考えておくべきこと
  • 高卒採用のポイント
  • 優秀な人材獲得のためにやるべきこと

高卒新卒採用のメリット

現在私は若者の就職やキャリア形成の支援を行っています。

学校で高校生に接しながら、就職に関する相談を受けたり、仕事の説明をしたり、企業の紹介をしています。

また人材を求めて多くの企業が学校を訪問してきます。その中には、それはそれは大学生も驚くような企業が多く含まれています。

そんな企業の人事担当者が口を揃えて発する言葉があります。

それは「人が採れない」ということです。

最近は少子高齢化や大学生の大手指向、さらに高校生の進学率の増加もあって人材確保が難しく、どの企業も苦戦しています。それは企業の大小には関係ありません。

そして今、苦戦の続く多くの企業から「人手ではなく人材」としての高校生に熱い視線が集まっているのです。

その気持ち良く分かります。そして高校生に焦点をあてること…大賛成です。

理由は簡単。

「高卒人材の可能性は無限大」だからです。

理由は以下の通りです。

  • 真っ白であるため成長の伸びしろが大きい
  • 日頃から就職を目指しているため覚悟が違う
  • 大卒より早い4年間の実務経験
  • 10代の入社による社内高齢化の解消
  • 先輩社員の意識改革
  • 社風の改善効果

等々…。

何よりも「若い」というのは非常に大きな武器なのです。

実際に数字が物語っています。

文科省の「令和3年3月新規高等学校卒業者の就職状況」から数字を引きます。

男女別就職率 
全体:97.9%
男子:98.4%
女子:97.1%

学科別就職率
工業 99.4%
商業 98.7%
情報 97.0%
農業 99.0%
水産 98.6%
家庭 97.9%
看護 99.2%
福祉 99.0%
総合学科 97.8%
普通 95.9%

令和3年3月新規高等学校卒業者の就職状況(令和3年3月末現在)に関する調査について 文科省

どいうですか?…この就職率!…凄いですよね。

同年の大学生の就職率と比べてみましょう。

文科省の「令和2年度大学等卒業者の就職状況調査(令和3年4月1日現在)」を引いてみます。

就職率の概要
大学:96.0%
短期大学:96.3%

大学等全体(大学、短期大学、高等専門学校):96.3%
専修学校(専門課程)を含めると95.8%

令和2年度大学等卒業者の就職状況調査(令和3年4月1日現在) 文科省

このように高卒は大卒以上の就職率を誇っています。

就職へのプロセスも違うので、全てをこの数字で語ることはできません。しかし多くの企業が、いかに高校生の採用に積極的になっているかが分かると思います。

特に工業高校や商業高校をはじめとする専門学科を有する高校の就職内定率は際立っています。

このように今、高校生の人材に対して企業から熱い視線が送られています。この傾向は今後続いていくと思いますし、ますます高くなっていくと私は考えています。

採用プロセスの面から見ても高卒採用は有利です。

高校生の場合は学校推薦の形で採用試験を受験するため内定になれば承諾するのが基本です。内定を出しても辞退されてしまう大学生とは決定的に違います。

採用コストを考えても高校生に焦点を合わせるのは有効なのです。

だた問題点がないわけではありません。良く高校生はミスマッチが起きやすく早期離職の懸念が大きい…そんな意見もあります。

実際、就職3年後の高校生の離職率は約4割となっています(厚労省発表

ただし大卒も約3割が辞めています。しっかりと人物を選んで教育していけば高卒人材は大卒にも劣らない戦力になる可能性を秘めているとも言えるのです。

そんな高卒人材を採用していく注意点を次項で見ていきたいと思います。

高卒新卒採用の注意点

高卒を採用するにあたっては注意点があります。

  • 育て上げるという気概を持つ
  • 社内研修を充実させる
  • 高卒採用を社内の活性化につなげる

ここではこの3つの視点について詳しく見ていきます。

育て上げる気概を持つ

最初は「育て上げる気概」を持つということです。

私は高卒を採用することは「プロ野球新人の金の卵を育てること」と同じだと思っています。即戦力ではないけど将来を背負って立つ戦力をじっくり育てるという考え方です。

プロ野球のドラフト会議を経て入団する高卒新人を思い浮かべて下さい。社会人1年生として入社してくる高卒採用の新入社員も同じです。

あの「マー君:田中将大」だって高卒ですよ。楽天やヤンキースでの活躍はご存知の通り。そして何より、あの「大谷さん」も!! 高卒採用にはこんな夢を育てる醍醐味があるのです。

高卒の新入社員を育てていくのはそんな感覚に似ていると私は思っています。

逆に言うと、新人を育て上げるという夢を持っている会社でなければ高卒採用を成功させるのは難しい。

単なる「人手」ではなく、未来を背負って立つ「人材」という考え方です。金の卵を育て上げる気概を持つことが必要なのです。

彼・彼女たちこそ将来の日本を背負って立ち、新しい日本を作っていく人材なのです。

高卒採用を実施する企業は「育て上げる気概」という視点を持って採用活動を行ってもらいたいと思います。

社内研修を充実させる

2点目は「社内研修を充実させる」ということです。

社内研修にはお金と時間をかけて下さい。会社の今後を託す人材です。それは今後への投資です。

伸びている会社はここが違います。

高卒社員は大卒と違いインターンシップもなく入社してきます。社会人としての教育はもちろんですが、スキル習得には時間とお金が欠かせません。

ここが中小企業には決定的に欠けているところです。

ちなみに「研修=OJT」ではありません。先輩につけておくことが研修と考えている企業は早晩衰退するでしょう。

研修を辞書で引きます。

研修
職務上必要とされる知識や技能を高めるために、ある期間特別に勉強や実習をすること。また、そのために行われる講習。

デジタル大辞泉

社内研修をこんな形でやってますか?…適当に見繕った社員につけておくことが研修ではありません。

百歩譲って先輩OJTでOKとしましょう。

その先輩は、しっかりと新人教育ができる社員でしょうか?…研修の勉強はしていますか?…会社のアイデンティティを理解し教育できますか?

こういったことを振り返りながら、しっかりとした研修システムを構築していって下さい。

私の感覚では研修期間は最低でも半年、できれば1年くらいかける必要があります。それができないのなら高卒採用は延期した方が良い。

そうでないと、新人にとっても企業にとってもメリットはありません。高校生の新人は即戦力にはならないのです。

良く「すぐ辞めてしまう」という会社がありますが、そういった会社は一度自社内の点検をやってみて下さい。社内に何らかの原因が見つかるかもしれません。

特に研修内容…何か問題があったらすぐ検証する。先入観を持たないことをおすすめします。

高卒採用を社内の活性化につなげる

最後は「高卒採用を社内の活性化につなげる」ことです。これは高卒に限ったことではありませんが、新入社員を社内活性化の起爆剤にして下さい。

例えば、入社3~5年の社員は仕事にも慣れ後輩もでき、そろそろ緊張感がなくなる頃です。こういった社員にとって優秀な新人の入社は大きな刺激になります。

このように、既存社員の刺激になるような社内活性化システムを作っていって下さい。そうすることで緊張感のある社風ができあがっていきます。

これができる会社なのか、できない会社なのか…?

今後、会社が生き残っていけるかどうか、明暗を分ける部分と言っても過言ではありません。

会社にとって新陳代謝は欠かせない。

「高卒採用を社内の活性化につなげる」という意識を絶対に忘れないで下さい。

高卒新卒採用のルール

高卒採用を実施していくにあたって知っておくべきポイントを上げます。知っておいて損はありません。

  • 学校と企業との信頼関係で成り立っている
    高卒採用を成功させるには信頼関係の濃淡が重要な要素です
  • 応募先企業の意思決定スケジュール
    求人票公開は7月1日ですが生徒の応募先企業の決定は6月中にほぼ終了
  • 高卒の求人倍率は2.08倍(大卒1.53倍)
    実業系の高校は10倍超の求人数も当たり前
  • 高卒の就職割合は17.6%でしかない
    大学への進学率54.8%、専門学校進学率16.3%(令和元年学校基本調査
  • 高校生向けのリクルート用会社案内を作成する
    通常の会社案内は役に立ちません、パワポで作って下さい
  • 先輩というロールモデルで企業が決まりがち
    先生方は民間企業の仕事内容には詳しくないためOBに照らして考えます
  • 学校にキャリアのプロはいない
    だからこそキャリアにこだわったアプローチを!
  • ハローワークで分かるのは数字だけ
    ハローワーク職員の方々は学校現場の実状はご存じありません
  • 都市部は就職者の割合が低く進学率が高い
    就職者の割合=東京:6.3%、京都:8.4%、神奈川:8.5%、大阪:11.2%
    ちなみに就職者の割合が一番高いのは佐賀県で32.1%
  • 産業別就職者数の比率は製造業が圧倒的に多い
    男子:①製造業47.9%、②建設業11.5%
    女子:①製造業30,5%、②卸売小売業16.5%
  • 高卒採用の対象職種が広がってきている
    制御系エンジニア、プログラマー、設計、営業など職種は広がっている
  • 2020年の出生数は84万人
    18年後の高卒求人対象です

こう言ったことを頭に置いて高校生の採用活動を行って下さい。

冒頭に書いてますが、高卒採用は学校と企業の信頼関係で成り立っています。今後も基本的に変わらないはずです。

採用試験で採否を決めるのは企業サイドですが、学校サイドが不合格を出す企業への応募を避けがちになるのは事実です。生徒の進路を早く決めて生徒共々楽になりたいからです。

この気持ちは決して否定できるものではありません。生徒は18歳です。18歳で人生の岐路に立たされている…あなたが18歳だったことを思い出して下さい。

勘違いして欲しくないんですが、私は「合格を出す=信頼関係につながる」と言っているのではありません。

中には勘違いされているのか、採用試験が終了して数時間しか経っていないのに合否の連絡をされる企業があります。こういったことに対して私自身は大変違和感を感じてしまいます。

信頼関係の構築方法に相手が学校だからという特別なものはありません。学校側に信頼される採用活動を行うことこそが信頼関係の構築には一番大切だということを忘れないで下さい。

高卒新卒採用を成功させるには

優秀な高卒人材を採用するために「やるべきこと」を書いていきます。

求人する高校を入念にリサーチする

まずは求人する高校を入念にリサーチして下さい。これができていない企業は多いです。生徒数・学科数・偏差値レベル・部活動・地域での位置付け・地域活動・歴史等々。

リサーチができているだけでミスマッチの半分は防げると私は思っています。また事前リサーチは学校との信頼関係を構築していくことにも役立ちます。

「学校×企業」の信頼関係の構築は「人×人」「人×企業」「企業×企業」と考え方は同じです。それは相手のことをよく知るところから始まります。

欲しい人物像を明確化する

良くある失敗パターンをお話しします。

「欲しい人物像を教えて下さい」と聞くと、2つの答えが返ってきます。

ひとつは「コミュニケーション能力が優秀な生徒」もうひとつは「明るく元気で素直な生徒」…この2つです。

9割以上がこの答えです。

この人物像、本当に考えた人物像ですか?…業種や職種が違えば欲しい人物像も違うはずなのに9割以上が同じ答え…あり得ません。

結局、9割以上の企業が欲しい人物の明確化できていないのです。人手として採れるなら「誰でもいい」的な会社があるのも事実です。

人物像に関してはじっくり社内を見渡して、活躍している社員や社内にフィットしている社員を参照して言語化していって下さい。

いわゆる「コンピテンシー」です。

自社の未来を切り拓いていく人材を募集するわけです。欲しい人物像はできるだけ細かく明確にして伝えるようにして下さい。 

求人解禁前に学校に訪問する

求人票の公開は7月1日ですが、それまでに学校へ訪問し必ず企業PRを行って下さい。できれば5月下旬までにはアプローチして下さい。

理由は簡単です。

求人票公開前の6月下旬までには生徒の応募先企業が決定するからです。それまでに学校を通して企業PRを行うということです。

早い企業は新年度前の1月・2月に行動を開始するところさえあります(3年生がまだ2年生時代に…ということです)。

ここが勝負です!

そしてアプローチを行う相手が重要です。優先順位を書きます。①3年生の担任 ②進路指導主事 ③3年生の学年主任。

ここに書いた相手に会わないと訪問の意味は激減します

できれば①②狙いです。もし対象の学校に就職専門の担当者がいる場合はその担当者でもOKです(最近増えています)。

アポイントの段階で相手を指名して下さい。

先生方は授業がありますので、できるだけ授業を優先し先生の予定に合わせるよう日時をすり合わせて訪問するようにして下さい。

求人条件にはこだわる

業種や職種にかかわらず求人条件が「不問」という会社が増えています。

確かに学科も問わない「求人条件が不問」の方が開かれてて生徒が集まりそうな気がします。ハローワークもそういったアドバイスをされるようです。

でも、先にも書きましたがハローワークは学校現場の実状は何もご存じありません。感覚的な話をされているだけでしょう。裏付ける数字なんてないはずです。

ここを不問とするか、細かい条件をつけるかは各企業次第ですが、入社後のことも考えた上で決定して下さい。

ちなみに不問としたことで応募が増える感覚は私にはありません(現場感覚です)。

不問としたことで土木科の生徒が電気系の会社に就職することはあるでしょう。普通科の生徒が機械系の会社に応募することもあるでしょう。

しかし条件の「不問」が応募数を増やすとは思えません。「応募への壁が無くなる」といった感覚でしょうか。

でも入社後を考えると…どうでしょう?

私自身は学科にはこだわった方が良いと思っています。理由は、3年間の勉強は決して無駄ではないからです。

良く「高校生の3年間は何も関係ない」なんて失礼なことを言われる人事担当者もいらっしゃいます。でも、あなた自身の3年間を考えてみて下さい。

3年間ってそんなもんですか?…高校生だって同じです。少なからずミスマッチ防止にも役立つと私は思っています。

募集して集まらない理由が条件の指定にあるのか、他にあるのか…十分な検討が必要です。

欲しい人物像を明確にするためにも、求人条件を指定することは必要だと私は考えています。

適性検査は必須

「適性検査」。これは必須です。

高校生の場合は基本的に採用試験は1回でしょう。この1回の面接で人物を判断することは困難だと思います。そんな時に適性検査はひとつの判断材料になってくれます。

ただし、くれぐれも適性試験だけで判断はしないように。あくまでも面接がメインで適性検査は面接を補完するものというスタンスで判断するようにして下さい。

ここを勘違いされて適性検査で生徒を判断される会社もあります。業種によってはしかたがない面もありますが、適性検査は面接をフォローするものとの認識が必要です。

どの様な適性検査を実施するかは各企業の業務内容に合わせて決定して下さい。

メジャーどころでは「SPI、CUBIC、GATB、YG、クレペリン、CAB」。最近種類も増えてます。

欠席日数、遅刻数、部活動、資格の有無は、ある意味評定平均より大切な項目です。この3項目で入社後の働く姿を想像することができます。

ここをどれくらいの基準に設定されるかはそれぞれの会社次第でしょう。いい人材の確保には欠かせない項目です。

十分に検討を。

最後に

今回は高校生の採用について見てきました。

今回の記事は高校生を採用するポイントに焦点を絞ったため、高卒の新卒採用における「一人一社制」といった独特の縛りについてはあえて触れていません。

こういった高校生独特の縛りについてはまた別の機会で触れたいと思っています。

見てきたように高校生は無限の可能性を秘めています。彼・彼女たちを優秀な社員として育てていくのは企業の使命でもあります。

優秀な社員を育てることは希望のある未来の日本を作ることでもあります。そういった意味でも、若い高校生を育て上げる気概をもって高卒の採用に望んでいくべきなのです。

最後まで目を通してもらいありがとうございます。
また次回お会いできることを楽しみにしています。

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