中小企業が新卒採用を成功させるポイント11選

採用

こんにちはエヌヒロです。今回は中小企業が新卒採用を成功させるためのポイントをお伝えします。大企業や有名企業と違い中小企業や地方の企業は新卒採用でどうしても苦戦しがちです。

しかし企業全体の99.7%を占めるのは中小企業なのです。中小企業の盛衰はまさに日本経済の盛衰と言っても過言ではありません。

そんな中小企業の今後を支えていくのは若い力です。その若い力が集まらないのは死活問題なのです。

今回は日頃から若者の就職やキャリア形成の支援をしている私が求人活動の最前線で感じる中小企業の問題点、またそこから見えてくる新卒を採用する上でのポイントを現場の肌感覚を通してお伝えしていきます。

今回の記事はこんな中小企業のお役に立ちます。

  • 求人を出しても新卒の応募がない
  • 社員の平均年齢が高く新卒を求めている
  • 若手社員が少なく会社の今後が心配
  • 新卒採用を始めたいが勝手が分からない
  • 新卒採用がうまくいかない

こんな悩みを持つ中小企業経営者や採用担当者は一読の価値ありです。

(注)今回の記事内容における中小企業の定義は従業員数300人未満としています。
   もちろん自社は中小企業であるという認識の従業員数300人以上の会社にも
   有効です。

中小企業の新卒採用の現実

今年は新卒採用が新型コロナウイルスの影響もあり日程や求人数に大きな影響が出ています。前年同月比で大卒内定率も減少、高卒に至っては採用試験日程の後ろ倒しなど混乱が続いています。

昨今の売り手市場の中、大企業の求人倍率0.42倍に対し中小企業の求人倍率はなんと8.62倍となっています。圧倒的に人手不足感が強いわけです。数字から見ると大企業は売り手市場とはとても言えない状況ですね。
※2020年3月卒業予定の大卒対象の調査 リクルートワークス研究所調べ

そんな中私は日々若者の採用支援を行っています。仕事柄、中小企業の経営者や採用担当者との面談も多く彼らから色んな声を聞くことになります。

その多くは「求人を出しても応募がない」を筆頭に「新人が定着しない」「年齢層が高い」「人手が足りなくて困っている」等々、愚痴にも似た「ボヤキ」が大半を占めます。

気持ちは分からなくもないです。

ただ私から彼らを見るといくつかの共通点があります。

  • 今後のビジョンがない
  • 欲しい人材が不明確
  • 新卒採用に対してあきらめの感情がある
  • 若手社員が採用活動に絡んでいない
  • 最初から「中小企業だから」というエクスキューズがある
  • 新卒採用を場当たり的に行っている

これは不思議と共通しています。

「こんな状態だから集まらない」と私は思っています。この辺りに大きな原因がある気がしています。

おそらくこういった部分を修正していけば中小企業も新卒採用を成功させることができるはずです。少なくとも今より成功に近づけるはずなのです。

新しい人材不足の怖さ

中小企業は深刻な人手不足や後継者不足といった問題を抱えています。このままでは企業自体が存続不可能となり休廃業や解散の拡大ということも考えられるわけです。

先に示した通り中小企業は日本の企業全体の99.7%を占めます。そしてそこで働く人たちは全労働者の約70%を占めています。

もしこのまま中小企業の人手不足や後継者不足が解決されなければ中小企業の衰退とともに日本経済は凋落の一途をたどることが考えられるのです。

本当に大変なことになりますよ!。

このような問題の方策として中小企業のM&Aをはじめ議論はされていますがクリアすべき問題が多く残っているのも現実です。

今回はその方策として中小企業の新卒採用を考えていきます。ここも多くの課題やクリアすべき難題が多いのも事実です。しかし採用については自社が変わることで問題をクリアできる点で手がつけやすいはずです。

私は中小企業出身の一人としてどうにかして中小企業の活力を取り戻す手助けをしたいと日頃から考えています。

今回の記事はそんな中小企業の新卒採用に対する一助となるべく思いで書かせて頂いています。

新卒採用を成功させるポイント11選

まず自社は新卒が応募するに値する企業かを自問自答する

まずは自分の会社の振り返りです。自問自答します。「あなただったらあなたの会社に応募しますか?」どうですか?。少しでも疑問があるなら説得力のある求人活動はできないでしょう。

そこで働くあなたに疑問点があるわけです。ましてあなたの会社を知らない学生達に魅力的に映るはずがありません。すぐに疑問点を列記しできるところから修正していって下さい。

疑問点の例をひとつだけあげておきます。

最近の学生の傾向として「転勤」を嫌います。転勤と聞いただけで求人をスルーする学生は大勢います。日本のメンバーシップ型雇用の中で転勤は当たり前のことだったのかもしれません。でも本当は誰もが好きではないでしょう。転勤なんて。

だから「地域限定社員」なんて職種ができてきましたよね。でもそんな職種で分けて給料に差をつけるのではなく支社や営業所が地方にあるのならその所在地で採用すれば良いだけのことです。もちろん転勤なしで。

そんな疑問点を考えて洗い出していって下さい。「そんなにすぐ変われるか!」って中小企業の社長は良く言うんです。でも私からみると「だから新卒が集まらないんです」。

経営者は意識改革が必要です。できるはずです。あなたがオーナー社長であるならあなたの気持ち次第でどうにでもなるはずです。あなたの会社を存続発展させたいと考えるのなら今までの意識を改革し列記した疑問点を修正していって下さい。

もし自分や社員だけで分からないのなら信頼できる外部の人間に相談して下さい。弁護士や会計士や労務士。メインバンクや商工中金等考えられるところは全て考え、可能なところから相談を行って下さい。

新しい人材は会社の今後を背負って立つ財産です。本気で新卒を採用しようと思うのであれば社員一丸となって新卒採用にフルコミットしかなければならないのです。

そうすることで会社の問題点が見えてきます。問題点はどこにあるのか。すぐできるのはどこか。優先順位をつけながら修正していって下さい

求める人物像や採用基準を明確化する

私は企業との面談で必ずこう聞きます「欲しい人物像を教えて下さい」と。9割方こう返ってきます「多くは求めません。明るく元気で素直であれば」。それって本当ですか?。考えに考えた人物像なんですか?。

業種や職種が違えば求める人物像も違うはずです。おまけに企業にはそれぞれ色んな文化があり社風も違います。それなのになぜ9割が同じ人物像になってしまうのか。私には何も考えずに新卒採用を行っているとしか思えません。

そしてこう付け加えられます「入社後しっかり育てます」。本当なんですか?。育てられますか?。他社と同じ人物像をあげる企業に新入社員をしっかり育てる研修システムが構築されているとは思えません。

人手不足が深刻で成績も問わないという企業も多いですが、基礎学力は仕事の飲み込みの部分でやっぱり大切です。

学力以上に「勉強を頑張った」とか「部活やバイトを頑張った」っていう学生時代の「努力」は社会人になってからの「胆力」という部分で大きな差が出てきます。要注意です。

また「コミュニケーション能力」も良く出てきます。でもそれを言ってる採用担当者本人のコミュニケーション能力が不足しているので本末転倒です。

求める人物像は明確にして下さい。いわゆる「ペルソナ」です。どういうペルソナを設定するのかは社内でじっくり話し合ってみて下さい。採用基準については後で触れます。

もう何も考えていないのにありきたりの人物像を設定するのはやめましょう。そうでないとミスマッチも生まれるし社員教育が破綻をきたす可能性すらあります。

事前にリサーチをする

アプローチする学生はもちろんのことその学生が所属する学校や所在地のことをできるだけ詳しくリサーチして下さい。

  • 若者の就労傾向
  • 都道府県の就労データ
  • 所属学校の基礎データ
  • 所属学校の学力レベル
  • 若者文化

事前にアプローチを掛ける学生や学校の特性はもちろん地域特性を調べることでアプローチの方法が見えてきます。

例えば県外就職が多い県と少ない県があります。県外就職をあまりしない県の学校に他県からアプローチしても効率が悪いですよね。

データを調べることで色んなことが見えてきます。知らないともったいない情報がネットには溢れています。

データをしっかりと利用し因数分解して採用活動に役立てて下さい。要は求人でもマーケティングが必要だということです。

政府系のデータは最低でも入手しリサーチして下さい。

大企業と同じ土俵で勝負をしない

これは当然と言えば当然です。知名度や資本力の違う大企業や有名企業と勝負しても結果は見えています。勝てるはずがありません。

リクナビやマイナビへの広告掲載をやめろとは言いません。でもバカ高い費用と結果の費用対効果はしっかりと分析して下さい。

それよりも中小企業には中小企業に合った求人方法があるはずです。弱者は弱者の戦法で戦った方が良いと私は思います。

どうすればよいのか?。

まずはビジョンを語りましょう。そこが重要です。

「今はこうだけど〇年後はこうなる」「一緒に働き頑張ろう」「君の力が必要だ」。こんなビジョンを語っていきましょう。

ビジョンには大企業も中小企業も関係ありません。そんな局地戦を展開するのです。ビジョンを語るための場の確保については次項からご説明していきます。

学校に営業する

もうこれは絶対に必須のことです。

アプローチの実行動として最初に起こすべきアクションです。アポを取り求人を出す各学校へ求人を行うことを宣言し自社を思いっきりPRして下さい。

自社製品の営業をするのと同じです。学校に求人情報を営業するのです。このとき超重要なことがあります。私が現場で感じていることです。

それは基本的に学校関係者は会社や仕事のことに詳しくないということです。この認識って超重要なんです。

どういうことか。

求人情報の営業先が大学のキャリアセンターでも高校の進路指導部でもいいんですが在籍している職員は企業についてはもちろん業界や業種、職種や仕事内容また技術やサービスについてハッキリ言って「ド素人」です。

加えて言えばその技術やサービスを利用した商売のことなんて分かるわけがないんです。もちろん企業対応はしていますので「門前の小僧的」な部分はあるかもしれません。でも基本に詳しくはありません。

そんな人たちが売り手市場である昨今、シーズンともなれば数十社数百社と来校する企業の対応をしていくわけです。ましてやあなたの会社は中小企業・・・はたして内容を理解し記憶に残るか?。難しいですよね。

実際のところ、学校現場で行われている学生への企業や仕事の紹介はOBというロールモデルに基づいたパズル合わせのようなものなのです。だからどうしてもパイプのある企業が強くなります。

勘違いして欲しくないのですが私は別にこのやり方を否定しているわけではありません。今のところ学校における職業紹介の方法としてはこの方法がベターであることは事実です。そんな学校の実状を認識しておく必要性をお伝えしているのです。

じゃーどうするのか。指名するんです。誰を?。仕事に詳しい人をです。必ず1人はいるもんです。営業先で一番民間企業の仕事について詳しい人を指名して下さい。

方法は簡単です。アポの時に「できれば(あなたの業種)についてお詳しい先生にご対応して頂ければありがたいのですが」と言って下さい。この求めに対し先方がどう対応するかも学校のレベルを見る上で有効です。是非お試し下さい。

地方の学校に目を向ける

有名校だけでなく地方の学校にも目を向けて下さい。優秀な人材が埋もれている可能性があります。

学校の特性を調べ学力水準を調査し自社にあった人材を確保できそうなら迷わずアプローチするべきです。ターゲットを広げてもデータを分析し絞り込みを図るのはマーケティングの手法と同じです。

学校やご当地機関が開催する企業説明会を利用する

これはお勧めです。学校が催す説明会は基本無料です。積極的に利用し学生に向けてPRしていきましょう。

最近は大学はもちろん高専や高校でもやっている学校があります。公的機関主宰の説明会も基本無料のはずです。

ただしそれぞれ色んな開催目的がありますので参加できるのかは十分調べる必要があります。参加できる説明会は調べればあるはずです(特に大学や高専)。しっかりと調べ是非利用していって下さい

高専生や高校生をターゲットにする

高専生や高校生をターゲットとしていくのもひとつの方法です。優秀な生徒はたくさんいます。

ハッキリ言いますが学生の質という意味で大学とは名ばかりの大学が数多くあるのも事実です。そこへいくと高専生や高校生の中には有名大学以上に優秀な人材が多くいるのも事実です。

私が対応した企業の中には大学生には求人せず高専生を中心に採用活動を行っているという企業がいくつもありました。しっかり学校をリサーチしペルソナを絞り込んでアプローチして下さい。

ただし・・・ですが、問題が2点あります。

1点目は昨今の売り手市場の中、高専や高校(特に工業高校)は求人倍率が10倍を優に超える学校が当たり前になってきています。ここは頭に置いて活動して下さい。

2点目が高専や高校独特の就職システムです。要は推薦制度が基本です(高専は自由応募も可)。この推薦制度は企業と学校との信頼関係で成り立っています。よってOBを多く採用している企業が強い傾向があります。

企業と学校がどちらともWin‐Winで成り立っている制度です。私はその制度の弊害も感じていますがすぐすぐには変わらないでしょう。

その中にどうやって入り込むのか・・・前項までそして次項からお伝えする内容をよく読んで有効な活動方法を見つけていって下さい。

採用チームを編成する

新卒の採用チームを作って下さい。若手中心です。年寄りは入れません。若手中心に2~3人で採用チームを編成します。

こうすることで社内に採用活動への一体感が生まれます。新人が入社しても彼らがメンターとなり、もしもの時の対策にもなります。

重要な点を3点。

1点目は当然ですがその分の手当は支払って下さい。仮に新人が採れなかったとしても手当は支払って下さい。もちろん採れた場合は成功報酬も支払います。

2点目は必ず社長も採用チームのメンバーと一緒に採用活動を行って下さい。これは鉄則です。もしも若手がいない場合は社長自らが採用担当を兼務して下さい。間違っても営業や総務や経理に任せないで下さい。

その場合、見た目に気をつけて下さい。スーツや制服はNG。ビジネスカジュアルで溌剌とした姿を若者に見せて下さい。

3点目は採用選考に社長は絡まないで下さい。裁量権を若手に与え任せることです(面接はされてOKですよ)。

どうすれば任せられるか。

簡単です。採用基準を明確にすることです。人物像を明確にするのと同じく採用基準を明確にするのは超重要です。ここが明確になっていれば選考に関する裁量権を若手に委ねることは可能です。

採用基準を明確にし選考には社長はじめ年配社員は口を出さない。明日の会社を作っていく若者に決定を委ねて下さい。

採用基準についてはこれも採用チームと共に考えていきましょう。意見を出し意見を聞く。どこにラインを引いてどんな特性の人材が欲しいのか。抽象的な基準ではなく具体的に示すことが重要です。

私がお勧めする採用基準の設定方法は「コンピテンシー」に沿ったものです。簡単に言うと社内のできる社員を因数分解し似たような社員を採用するというものです。

以下に列記しておきます。

  • 求人する職種の社内の好業績社員を見つける(いわゆるエース社員)
    いない場合は近い社員を参考に理想の社員を作り上げる
  • その社員の行動特性や仕事のしかた考え方を分析する
  • 分析した内容をコンピテンシーモデルとして採用基準に落とし込む

このコンピテンシーモデルを基本ベースにして設定した人物像と合わせてあなたの会社にあった採用基準を明確にしていってください。

適性検査は必ず実施する

これは絶対実施して下さい。採用試験の際に必須です。適性検査は数多くあります。自社に合った適性検査を実施しミスマッチをできるだけ減らしていきましょう。

学生は自己理解や仕事理解が基本的にできていないと思っていた方がいいです。自己分析や企業分析が大切だとは分かっていてもどこまでやっているかは未知数です。就職後3年以内の離職率がそれを物語っています。

ここでも大切なことを1点。

適性検査の結果が出たら結果の解析をプロにお願いしましょう。結果には解説がついてきますが一定の講習を受けていない人が見ても深く読み解くことができません。

適性検査は受検する態度や姿勢によって大きく左右されてしまいます。結果を読み解くには知識やノウハウが必要です。解析を間違えば折角の人材を逃してしまうことにもなりかねません。

検査機関とも相談し結果の解析には注意して対処するようにして下さい。

インターシップや通年採用を導入する

どちらとも優秀な人材を確保するためにもう当たり前になりつつありますね。積極的に行って下さい。

インターンシップについては大学生であれば長期中期短期といくらでもやれます。高専生もある程度可能です。

高校生の場合は色んな制約があってまだまだ難しい部分もありますが、地元の高校生を積極的に受け入れるには大きな効果があります。是非検討されることをお勧めします。

通年採用については高校生はやはり大きな縛りがあり難しいでしょう。でも大学や高専は可能なはずです。

中小企業としてできることはどんどんやっていきましょう。

まとめ

中小企業が採用を成功させるポイントとして11選を駆け足で見てきました。これだけやっても結果がすぐに出るとは言えないのが採用の難しいところです。日本は少子化のスピードが加速し学生自体が減っているのでなおさらです。

でもそんな状況だからこそ早くから手を打ち将来を展望し地道に進める必要があるのです。マジックは絶対にありません。ちょっとずつ少しずつ進めるほかないのです

でもその積み重ねが花開くときが必ず訪れるはずです。私はそういう中小企業を多く見てきました。

日本の実態経済が元気になり活力を取り戻すためには中小企業の活性化が欠かせません。そのためには優秀な人材獲得競争を勝ち抜いていくしかないのです。

外国人に人材を求める方法もあるでしょう。でもまずは日本の若者に目を向け企業や日本の進化を委ねる土壌を作っていきたいものです。

最後まで目を通してもらいありがとうございます。
また次回お会いできることを楽しみにしています。

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